研究テーマ

1. エネルギー戦略

 真の持続性とそこに向けた段階的移行の接続性、不確実性に対する頑健性を備え、環境問題を解決しエネルギーの安定供給を図るべく、2100年、2050年、2030年までのエネルギー技術戦略を研究してきた。
 2005年の超長期エネルギービジョンをベースとして、再生可能エネルギー、需要技術、需要の能動化、電力システム需給バランスを中心に検討を行い、2008年のCool Earthエネルギー技術革新計画、毎年改訂するエネルギー技術戦略マップなどに反映した。今後、地球環境問題に対する国際的な議論の進展と並行して、技術、制度、ライフスタイルなどを組み合わせた移行可能性を検討し、これに必要な要素を摘出する。

2. 長期物質・エネルギー需給解析・評価

 物質とエネルギーと統合して取り扱い、真の持続的社会経済の実現に不可欠な生産・利用・再生の新しい技術を、設備の新設・廃止を含めて段階的に実現してゆくための解析・評価ツールを開発し、これを用いて地域、国、世界のエネルギーシステムのあり方を考える。
 これまで、 エネルギーモデルと電力需給モデルを連動した2030年〜2050年を射程にいれたモデル解析を実施し、電気自動車の導入などに代表されるエネルギー需要の構造変化と、電力需給調整の条件のももとでの再生可能エネルギー発電や電力貯蔵技術の導入についてモデルの開発、シナリオ解析・評価を進めている。
 今後、生産、利用、再生に係る技術開発、インフラ改編など長期を要する諸要素を組み合わせて、ロバストな物質・エネルギーの需給構造、移行可能性の探索を行う。

3. 動的エネルギー需給解析・評価

 電力需給における変動性の再生可能エネルギーや調整機能の小さな原子力、石炭ガス化などの増加と、需要側の貯湯槽や蓄電池などといったエネルギーを貯蔵できる設備の導入普及など、長期のエネルギー需給に大きな影響を与える技術を含めた動的なエネルギー需給計画の解析・評価を行う技術を開発し、それらを用いたエネルギーシステムの評価を行う。
 再生可能エネルギー発電の変動、ベース電源の安定運用、火力・水力などの調整電源の運用の減少により引き起こされる需給調整力の拡大は将来の電力系統の需要課題の一つである。この対応として、再生可能エネルギー発電予測、従来型電源の設備、運用の改善、バッテリーなどを含む需要の能動などが有望である。これらの機能を強化した動的エネルギー需給解析モデルを開発し、2030年に至る電力需給シナリオの解析・評価を開始した。
 今後、様々なシナリオについての解析・評価を行い、望ましい電力需給の姿を追求する。

4. エネルギーマネジメント(HEMS,BEMS)と再生可能エネルギー

 今後導入が期待される再生可能エネルギーは出力が変動するという特性を持ち、大量導入の課題となる。再生可能エネルギーは、需要近くに設置されることが多く、需要、分散電源、分散エネルギー貯蔵などを制御することでこの出力変動問題を効果的に解決することが期待される。
 2009年より、ならし効果を含めた広域の再生可能エネルギー発電予測、直接信号、間接信号によるエネルギーシステム全体の集中エネルギーマネジメントと建物などのHEMS/BEMSの協調による需要の能動化を核とする系統の需給調整能力の飛躍的向上を可能とする集中/分散のエネルギーマネジメント協調の体系の基本的検討を実施した。
 今後、生活の質を保ち、再生可能エネルギーの導入を可能とするエネルギーの自律的需給を目指し、需要側のエネルギー技術の最適構成、HEMS, BEMSによる最適制御、集中/分散エネルギーマネジメントの協調制御・運用の研究を行う。

5. その他

 社会経済活動を支えるインフラ設備は、そのライフサイクルの中で適切な管理と保全を必要とする。この管理と保全は個別の設備に特有な技術に加え、設備とその運用状態に関するデータに基づく人間の判断と組織的な働きかけで行われる。比較的大規模な設備により焦点があてられてきた設備管理も、今後はエネルギー分野の分散型のPVシステムなどの小規模システム、設備管理のみではなく運用管理との融合が必要となる。
 これまで、研究会活動によりアセットマネジメントを中心にした調査を実施し、その結果をEAM(Enterprise Asset Management)の解説本にまとめ出版し、PVシステムの遠隔故障管理システムの技術開発に着手した。
 今後は、研究会において集中/分散の両タイプの設備管理の調査を継続するとともに、分散型の太陽光発電システムなどいくつかの分野に焦点をあててその設備管理についての調査を勧め、さらなる研究テーマの発掘につなぐ。

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